自作したアンプを使って電圧の変圧の仕組みについて、簡単に測定データと共に紹介します。
雑学1(電気が自宅に届くまで)
発電所で作られた電気が自宅まで届くイメージ図があったので引用します。
電気の旅 ~家庭や身近な機器に電気が届くまで~
https://www.rohm.co.jp/blog/-/blog/id/9390904
発電所で発電された超高電圧の交流電気は各変圧ポイントで降圧され、各家庭に送電されます。
欧州はおよそ230V、アメリカ120V、日本はご承知の通り100V。
そこからギターアンプ内の電源トランスで変圧、整流回路で交流⇨直流に変換してアンプが稼働します。
なぜ、直流ではなく交流で送電されるのか?
主に言われている以下の理由。
- 変圧することが容易である
- 送電時のエネルギー損失を小さくできる
変圧することが容易
⇨使用する機器に合わせて変圧器(トランス)で電圧調整が容易。ギターアンプも出力、真空管の種類などにより家庭の電気を変圧して利用。
送電時のエネルギー損失を小さくできる
⇨送電するために電線が日本中に張り巡らせれています。この長距離の電線の抵抗により、電気エネルギーが熱エネルギーに変換され大気中に放出。大切な電気エネルギーを無駄にしています。
このロスを極力減らすために交流高電圧で送電されています。
その理由をジュールの法則と電力の公式から求めたメモが以下です。
雑学2(家庭の電圧<実効値・波高値・ピークtoピーク>)
住宅に送電された電圧100Vをオシロスコープで確認すると下記の通りになっています。
私の住まいは西日本のため周波数は 60Hz(東日本は50Hz)。波高値、実効値、ピークtoピークを図で表した物が以下の図です。
- 波高値(最大値)⇨ 141V
- 実効値 ⇨ 100V
- ピークtoピーク ⇨ 242V
※余裕を持って電圧が多少高くなっている場合がほとんど
この電圧が電源ケーブルを通って、次に解説する電源トランスの1次側に入力されます。
真空管ギターアンプの変圧(トランスの原理)
アンプを駆動させるため、家庭電源の交流100Vを必要な電圧に変更するのが電源トランスの役割です。Champ 5F1の回路図ではこの青枠の部分。
下記、トランスのイメージ図で解説します。
- 1次側コイルに電圧V1をかけると鉄心に磁束が発生する
- 磁束は鉄心を伝わり2次側コイルへ
- 2次側コイル内を磁束が通り、誘導起電力が発生し負荷へ電圧V2が掛かる
- 交流であるため電源の周波数毎に磁束の方向が入れ替わる
- 1次側、2次側の巻数の比で電圧をコントロールできる
このアンプで使用する電源トランスは下記3つの電源電圧を出力しています。
- 整流管ヒーター:AC5V
- プリ、パワー管ヒーター:AC6.3V
- プレート用電源:AC280V
各真空管のヒーターへは交流のまま印加し、真空管を暖めます。プレート用AC280Vは整流管に入り、整流されます。
変圧後の様子をオシロスコープで確認した結果が以下です。
まとめ
発電所から送電された電気をギターアンプ内の電源トランスまで簡単ですが紹介しました。
今回のポイントとしまして
- 交流電圧は直流電圧と比べ変圧することが容易である
- 家庭の交流電圧の最大値は約141V(実効値100V × √2)
※電圧と時間のイメージ図参照 - 家庭用の電圧(実効値)約100V(最大値141÷√2)※電圧と時間のイメージ図参照
⇨負荷で消費されるエネルギーを直流電圧と同じ土俵で比較できるメリットがある。 - 電源トランスは1次側と2次側のコイル巻数比で電圧をコントロールする
次回は整流管に入力されたプレート用の電圧AC280Vの整流の仕組みを紹介します。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
整流管の紹介記事⇩
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